F1第9戦カナダGP(ジル・ビルヌーブ・サーキット)の決勝レースは、朝から快晴で、路面温度41度、気温は20度とレース日和になった。
●【2022F1第9戦カナダGP】決勝レースのタイム差、周回数、ピット回数
■3年ぶりのF1カナダGPに33万人
3年ぶりに開催されたF1カナダGPには、3日間で33万人が訪れたことが発表され、ファンがF1を待ち望んでいたことがわかる。
レース前のフォーメーションラップを終えて、スターティンググリッドに全20台が並ぶと、土曜日の予選後「ターン1でフェルスタッペンに仕掛けるよ」と笑顔で話していたフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)の動き出しに注目が集まった。
アロンソは10年ぶりのフロントロウ・スタートで、1周だけでもレースをリードしようとスタートに賭けていた。
■スタートに失敗したアロンソ、トップを奪えず
5つのレッドシグナルが消え70周のレースがスタートすると、イン側からスタートしたポールポジションのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が抜群のスタートを見せ、ターン1を難なく制した。
出だしがそれほどよくなかったアウト側の2番グリッドからスタートしたアロンソはなんとか2番手をキープしたが、後続のカルロス・サインツ(フェラーリ)を抑えるのが精一杯だ。トップのフェルスタッペンは1周目で1秒の差をつけて逃げる余裕の展開になった。
1周目の最終シケインで、バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)が直進しエスケープゾーンを通過した際、ボラードを飛ばしてしまい、順位を13番手に下げた。のちに「ブラックアンドホワイト旗(黒白旗=スポーツマン精神に反する行為)」が出された。直接的なペナルティはない。
2周目、5番グリッドからスタートしたケビン・マグヌッセン(ハース)の右フロントウイング翼端版がダメージを負っているのが映し出された。
リプレイ映像では、スタート後のターン3の進入で4番手ルイス・ハミルトン(メルセデス)のアウト側に並んだが、サイド・バイ・サイドで軽く接触。その際にダメージを負ったようで、のちにオレンジボール旗(メカニカルトラブルの修復指示)が出されて緊急ピットイン。大きく順位を落として上位争いから脱落してしまう。上位を争っていたとはいえ、もったいないミスだ。
3周目、サインツが同郷の大先輩アロンソを抜いて2番手に浮上。
■ペレス、失速!リタイア
8周目、スローダウンするセルジオ・ペレス(レッドブル)が映し出された。「エンジンを失った」と言った後「ギアがスタックした」と無線で伝え、ターン8のエスケープゾーンでマシンを止めた。
リプレイ映像ではターン7の立ち上がりでギアが入っていないような音が聞こえたあとに失速した。F1カナダGP最初のリタイアは、この数戦で優勝1回、2位2回と好調でランキング2位に上がってきたペレスだった。
その直後、ペレスのマシン撤去のためVSC(バーチャル・セーフティカー)となった。
9周目の終わりに、トップのフェルスタッペン、4番手ハミルトン、16番手角田裕毅(アルファタウリ)、17番手ニコラス・ラティフィ(ウィリアムズ)がピットイン。
■レース再開、2番手アロンソ、ハミルトンから順位を「守れ」とオコンに圧力?
11周目、VSCが解除されレース再開だ。トップはサインツ、2番手アロンソだ。
アロンソは無線で「ハミルトンは順位失ったの?」と聞くと、ピットは「エステバン(オコン)の後ろだよ」と返す。するとアロンソは「僕たちは何をすべきかわかっているね」とピットに伝えた。以前オコン宛てに「ライオンのように守れ」と伝えていた無線を思い起こすような内容だ。オコンは一度はポジションを守ったものの、ホームストレートでDRSを使うハミルトンにオーバーテイクされてしまった。
■シューマッハが失速!リタイア
20周目、ミック・シューマッハ(ハース)がターン8でストップ。再びVSCが導入され、複数のドライバーがピットストップをした。
29周目、2番手スタートだったフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)がようやくピットインしてハードタイヤに交換。ピット前に「グレイニングが出てる。特にフロントタイヤだ」と伝えていた。タイヤ交換をしたアロンソは7番手でコースに復帰した。
34周目、トップを快走中のフェルスタッペンは「タイヤグリップを失っているような気がする」と伝えた。ハードタイヤにグレイニングが出ているようだ。もちろん、2位のカルロス・サインツ(フェラーリ)にもそれは伝えられ、徐々にその差を縮めている。
37周目、14番手のピエール・ガスリー(アルファタウリ)が「****!何もできないよ」とイライラをぶつけた。何かのテクニカルトラブルを抱えているようだ。
38周目、そのガスリーが2セット目のハードタイヤに交換。17番手でコースに復帰し厳しいレース展開となっている。一方、角田裕毅は11番手まで挽回している。
40周目、19番グリッドからスタートして追い上げていたシャルル・ルクレール(フェラーリ)がピットイン。しかしピットストップは5秒以上かかってしまい、12番手でコースに復帰した。
■フェルスタッペン、タイヤのグレイニングに苦しみ2度目のピットイン。ハミルトンとバトル
44周目、タイヤのグレイニングに苦しむフェルスタッペンがピットインして再びハードタイヤに交換。ここでカルロス・サインツ(フェラーリ)がレースをリードする。
フェルスタッペンがピットアウトすると、合流地点のターン2出口でハミルトンに行く手を阻まれ3番手でコース復帰。怒るフェルスタッペン。しかし、そのラップにはハミルトンがピットインしたため、最終コーナーに向かうストレートでオーバーテイクして2番手に戻った。
■角田裕毅、ピットアウト直後にクラッシュ!
49周目、角田裕毅がターン2でノーズからバリアに突っ込んでいる映像が飛び込んできた。ここでセーフティカーが導入されると、多くのドライバーがピットストップをし、順位はかなり乱れていく。
リプレイ映像では、角田裕毅は勢いよくピットアウトしようとしたところ、タイヤスモークを上げながら真っ直ぐバリアに突っ込んでしまった。タイヤが冷えている中でブレーキングが遅れてしまったように見えるが、ブレーキトラブルの可能性もある。いずれにせよ、ここでマシンを降りてレースを終えてしまった。
■終盤、フェルスタッペン対DRSを使うサインツ
55周目、セーフティカーがピットに入り、レース再開。逃げるフェルスタッペンを、初優勝を狙うサインツが追う展開。3番手ハミルトンは徐々に離されていく。
タイヤがフェルスタッペンより新しいサインツは、ファステストラップを更新しながら1秒以内にピッタリとつけ、オーバーテイクのタイミングを伺う。しかしサインツに3ヶ所でDRSを使われながらもフェルスタッペンはうまくコントロールしながら逃げる。
F1王者が逃げ切るのか、F1初優勝者が誕生するのか。残り10周の攻防だ。
64周目、サインツはファステストラップを塗り替えながらプレッシャーをかけるが、それでもフェルスタッペンは0.6秒から0.9秒差をコントロールして逃げている。
■フェルスタッペン、ポール・トゥ・ウィンで今季6勝目!
その後も、フェルスタッペンとサインツのポジションは変わることなく、ポールポジションからスタートしたフェルスタッペンが逃げ切って優勝した。F1初優勝を狙っていたサインツは、3ヶ所のDRSを使っても0.993秒届かず2位でフィニッシュした。
優勝したフェルスタッペンは「プッシュして、(バッテリーを)チャージしてを繰り返して最後は楽しかったよ」とレース後には笑顔を見せる余裕があった。
3位にはハミルトンが入った。開幕戦バーレーンGP以来となる今季2度目の表彰台に嬉しそうだ。
4位はジョージ・ラッセル(メルセデス)で、メルセデスF1は多くのポイントを持ち帰った。
5位は19番グリッドからスタートして追い上げたルクレールだった。
6位にはオコン、7位にはアロンソと、アルピーヌはダブル入賞も悔しい結果となった。
8位にはバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)、9位はジョウ・グァンユ(アルファロメオ)が入り、アルファロメオはダブル入賞を果たした。
10位は母国GPで入賞したランス・ストロール(アストンマーティン)だった。
アルファタウリF1は、ガスリーが14位、角田裕毅はリタイアだった。
2連戦を終えたF1は、1週間の休みを挟んでヨーロッパに戻り、イギリスGPで再開する。7月は夏休み前に2連戦が2回、5週間で計4戦を行う過密スケジュールとなる。